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クリスマスシーズンを迎えるにあたって、家庭でもバターを使うケースが増えてきます。

そんなときに気になるのが、バターの入荷状況です。

数年前から品薄状態が続いているのは、多くの人がご存知の通りです。

 

そこで、バター不足の原因や今後の値段の予想などをレポートします。

 

 

酪農家不足が生乳不足を生む!?

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バターは母牛から搾る「生乳」が原料です。

その生乳を加工してバターと脱脂粉乳が作られるわけですが、生乳からは飲料としての牛乳も作られています。

飲料としての牛乳のほうが日持ちしないなどが理由で、生乳は牛乳へ優先的に回されています

それ以前に、そもそも原料となる生乳はここ数年減少傾向にあります。

 

乳牛を飼育管理する酪農家そのものが減っているからです。

 

原料が減っている中、使える生乳量も牛乳に優先されていては、意図しなくてもバターの加工に支障をきたすのは当然のことともいえます。

 

生乳は誰が管理する?

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生乳は基本的に全国にある約10の指定生乳生産者団体(通称・指定団体)」によって一括管理されています。

代表的な指定団体が、北海道にあるホクレン農業協同組合連合会(通称・ホクレン)です。

指定団体が生乳を集め、乳業メーカーに渡して生乳を牛乳やバター、生クリームやチーズへと加工されて店頭に並べられます。

 

ホクレンなどの指定団体は酪農家と乳業メーカーの間の仲介業者的役割を果たしているのです。

酪農家が取引先を選びたくても指定団体以外はなかなか選べないのが現状です。

指定団体以外にも乳業メーカーとの仲介ができる会社組織はありますが、これらの乳業メーカーに生乳をおろすと補給金を受け取れないという現実があるのです。

 

「補給金」とは、卸した生乳の加工用途を指定団体に任せる分、それぞれの販売価格の差額を補給金として酪農家に支払う仕組みです。

 

いわば日本政府が酪農家を保護するための補助金制度ともいえます。

 

酪農家は一般に搾った生乳をすべて指定団体に託すことで、補給金などの補助を受けることができるのです。

 

 

バターの輸入を管理するのは

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バターは日持ちがすることと運搬しやすいことから、「足りなければ輸入すればよい」と後回しにされてきました

この流れは現在も変わりません。

この「後回し体質」こそが、バター不足の原因ともいえます。

 

バターの輸入量を決めるのは、政府です。

 

その姿勢は、民間の需要を予測してダブつかない程度に輸入するというもの。

 

これではクリスマスシーズンのように需要が増える時期に緊急輸入してもギリギリの供給量になるのは致し方ありません。

なぜ、政府が1つの食品の輸入に介入するのでしょうか。

 

そこには減少しつつある酪農家の保護という名目があるのです。

 

輸入量が増えては酪農家の収入が落ちてしまうので保護政策として輸入量を管理するという姿勢をすでに半世紀ほど取り続けています。

 

これが指定団体誕生の理由でもあります。

 

 

気になる今後の価格動向

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2016年10月、政府は年末のバター需要を見込んでバターの緊急輸入を決めました

現在のところ、バター不足はないと発表されています。

 

価格はこれまで同様、200gあたり400~450が見込まれます。

 

しかし慢性的な酪農家不足と生乳が指定団体によって一括管理される流れは変わりません。

これまでと同じ仕組みで取引される以上は、これからもバター不足は起こり得るのです。

 

多くの人が見落としがちですが、酪農家が増えたところで生乳の生産量は今日明日で急に増えるものではありません

乳を搾れる牛は出産後まもなくの母牛に限られます。

つまり、子牛が成長し出産するまでの時間、酪農家たちはいわば無収入の状態で飼育管理するのです。

もちろん、生き物が相手ですから休みはありません

生乳が足りないなら増産すればよいと言うのは容易ですが、現実には時間が必要です。

 

指定団体がなければ自由に取引できるからいいというのも、安易な判断です。

酪農家が生乳すべてを牛乳用に出荷してしまえば、当然バターは不足します。

 

卵が先か鶏が先かではないですが、政府と酪農家と指定団体の3角形が微妙なバランスで成り立っている現状こそが、バター不足の原因であり、価格高騰の原因です。

 

消費者にとっても無関係ではいられません。

 

今後、酪農家が生活するためにこれまでの仕組みの中で保護し続けるのか、新たな形を模索するのか、バター問題は私達に将来の選択を迫っているのです。

 

まとめ

  1. バター不足の原因は酪農家の減少と指定団体による生乳一括管理、政府による輸入量コントロールバランスがもたらしたものだった
  2. 値段は年末にかけて400~450円を推移すると予測される
  3. このまま酪農家が減少し続ければ、さらなる高騰もありうる
  4. 今後の酪農業界のあり方を消費者も考える時がきている

 

いかがでしょうか。

 

一口にバターが足りない、といってもその問題は半世紀にわたって受け継がれてきた日本の酪農システムにあるのです。

消費者にできることは、酪農の将来を見越した選択です。

このように言うと難しく聞こえますが、バターを美味しく丁寧に食べることに尽きるかもしれませんね。

 

これから年末を迎えるにあたって、バターが店頭に並んでいたらぜひ購入してみましょう。

簡単なトーストだって酪農家を想えば本当に美味しいご馳走になりますね。